「家族」の力

小山市立間々田中学校三年 小澤 由佳

 私には、大好きな祖父がいる。祖父は、今年で八十六歳。孫八人、ひ孫が十人いる。三年前まで、埼玉の建築会社で建物の修理をしていた。八十三歳になっても、現場で働く祖父を私達は心配していたが、尊敬もしている。八十歳といえば、働かなくても良い年齢だと思う。それなのに、あたり前の様に働き続ける祖父の意欲的な姿勢に感心する。さらに、農業も続けており、米や麦、大豆などを作っている。
 祖父の長生きの秘訣は、歯であった。祖父は常々「自分の歯だと何でも噛める。だから、何でもうまい。」と言っている。おいしいと感じられるから、しっかりとした食事ができ、長生きする事に繋がっているのだということなのだろう。歯の大切さを小さい頃から聞いてきたおかげで、私はむし歯がない。それは祖父の笑顔を見てきたからでもある。
 祖父の笑顔には力がある。ひ孫達がどんなに泣いていても、祖父が笑顔であやすと泣き止む。その理由は分からないが、やはり歯が関係しているのではないかと思う。黒い肌に白い歯、どちらも光っていてずっと見ていることができる。田んぼで手を振る祖父の姿は、どんな人気俳優よりも、他の若いおじいちゃんよりも何倍もかっこいいと思う。
 そんな祖父を見てきた母は、私をむし歯にさせまいと、小さい頃からいつも歯をきれいに磨いてくれていた。おかげでむし歯は一本もない。しかし、小学四年のとき、自転車で転んでしまい、永久歯の前歯を折ってしまった。そのときから前歯の一本は自分の歯ではない。二度と生えてくることはない。母は泣いていた。私はそのときの状況を理解できず、呆然と立っていた。ただ、母の姿からとんでもないことをしてしまったと感じられた。今でも冷たいものを食べる時、その歯がしみることがある。しみると、あのとき母の泣いていた顔が蘇ってきて心もしみる。歯と心がしみる時、私の歯は私の歯だけれども私だけの物ではない。と改めて思う。
 「今の私」があるのは、家族のおかげだと思う。そして、「これからの私」は自分でつくっていきたいとも思う。やってみたいことはいくつかある。その一つが、祖父の作る米を自分で噛んで「うまい!」といつまでも言えるようにしたいという事。もう一つは、高校で大好きな合唱部に、私は入る。その時、たくさんの人の前で、真っ白な歯の笑顔で歌えるようにするという事。そのために、毎日しっかり磨いていこうと思う。歯科衛生士の方が「きれいな歯は一日にしてならず。」とよくおっしゃっている。その言葉を心に刻んで、めんどうなことでも後回しにせずに、自分から行おうと思う。そして、ずっときれいな歯で生きていきたい。

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