世界の歯の習慣と歯の大切さ

さくら市立喜連川中学校三年 津村 峻平

 いよいよ受験生ということもあり、不要なものは思い切って処分していこうと、張り切って部屋の片付けを始めたときのことです。小学生のころに、よく読んでいた漫画を見つけ、懐かしさに思わずページをめくっていると、本のすき間から何かがぽろっと膝元に落ちてきました。それは小さな小さな歯でした。
 僕の家では乳歯が抜けた時の習慣があります。それは、上の歯が抜けた時には、家のデッキの下に、下の歯が抜けた時は、家の屋根に歯を投げるというものです。おそらく、漫画に夢中になっていた僕は、あとで投げればいいやと思い、そのまま本の中に置き忘れてしまったのでしょう。久しぶりに、このおまじないのことを思い出し、ふと興味がわいたので、調べてみることにしました。すると、似たような風習が、世界各地にあることがわかりました。アメリカやフランスでは、抜けた歯を枕の下に入れるそうです。そこへ歯の妖精やネズミがやってきて、歯を持って行く代わりにコインを置いていくといわれています。しかも、妖精はきれいな歯しか持って行かないので、日頃から歯みがきをするようにとの警鐘にもなっているようです。また、ネズミの歯は後から伸び続けることから、歯が成長するという観点でネズミは縁起がいいとされています。コスタリカのお母さんは、子どもたちの健やかな成長を願いながら、自ら小さな歯を加工し、ペンダントやイヤリングとして子どもにプレゼントをするのだそうです。日本では、僕の家のような習慣が多く見られるほか、防湿効果に優れた桐箱に保管する場合もあるそうです。
 当時はなぜ、そのような習慣があるのかわかりませんでした。でも、今考えてみると、丈夫で健康な歯が生えてきますように、そして、子どもの分身が家に守られて、子どもの健康や成長を願うおまじないであったのではないかと思います。方法や風習の違いこそあるけれど、歯を大切に思う心、そして、子どもの健康を願う親の愛情というものは、世界共通のものだということもわかりました。
 歯がなければ、食べることも、話すこともできません。必要な栄養を十分にとることも難しくなります。先日の歯科検診で、校医さんから、片方で噛んでいると顔が変形したり、体が曲がってしまうとの指導を受けました。自分では全く意識したことがなかったので、普段の何気ない習慣で、歯の位置が変わり、顔の形や体までも変化してしまうことに、とても驚きました。歯は小さいけれど、体の健康に大きな影響を与えていくものだということを実感しました。と同時に、自分の意識や習慣を少し変えるだけでも、健康な歯は保たれていくのではないかとも思いました。かけがえのない歯を一生大切にするために、今から良い習慣を心がけていきたいと思います。

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